PRACTICE
輸入取引の実務について

契約書を作成する際に入れるべきポイント

契約書を作成する際に入れるべきポイント

契約書はできる限り自分でつくろう

条件に合意できたら、いよいよ契約です。契約書は取引先がつくる場合とこちらでつくる場合がありますが、取引先がつくる場合は、得てして相手に都合のいい形につくられています。

以前、中国から商品を輸入した際、サンプルと違うものが送られてきたことがありました。裁判を起こそうとしたのですが、相手方が作成した契約書に「裁判は中国の法律に基づき中国で行う」と明記されており、それに気づかずサインをしてしまっていたため、泣く泣くあきらめる羽目になったのです(*1)。

もし、自分で契約書を作成していれば、こちらに有利に進められたかもしれません。このようなことにならないよう、できる限り契約書は自分でつくるようにしましょう。


*1 裏面約款には、必ず「裁判になった場合は、日本の法律に基づき日本で行う」と明記すること。

絶対盛り込むべき3つの条件

契約書を自分でつくる場合、契約書の裏面に、一般取引条項として、取引の条件を記載することができます。これを裏面約款(りめんやっかん)といいます。

一般にトラブルが起きやすいのは、サンプルとの品質の違い、急な価格変更、納期の遅れの3つです。これらを外国の業者に守らせるためには、次の3つをぜひとも盛り込んでください。

①価格に関する調整禁止(No Adjustment)

②船積期間の厳守(Shipment)

③契約不履行の場合の輸出者責任

これらは、取引先のつくった契約書には当然含まれていません。
自分で作成できない場合は、これらの項目を盛り込んでもらうよう交渉しましょう。

契約書で特に気をつけたいこと

契約内容は、契約書の表面(表面約款)に記載します。修正や追加事項などは手書きで記入しても構いません。その場合、手書き文字のほうが印刷内容(活字)より優先されます。

契約書の体裁は、つくる人によってさまざまです。契約書の中で特に注意したいポイントは、つぎの3つです。

品質条件(Quality)

品質は何を基準に決めるか、またいつの時点で決めるかという問題があります(後述)。

品質決定時点は特別な取り決めがなければ貿易条件によって決まりますが、品質そのものの条件に関しては、私は「As per the samples submitted(提出されたサンプル通り)」と記載することをおすすめします。これは品質が担当者の主観で左右されることが多いからです。

数量 (Quantity)

国際取引で使用される単位で記入します。

船積日(Time of Shipment)

納期は、もうひとつの重要なポイントです。正確に日付を記載し、間違いのないようにしましょう。

指示はすべて契約書に入れよう

出荷する前に直してほしい点など、商品に関する指示がある場合は、必ず契約書に盛り込んでください。いくら口頭やメールで念を押しても、契約書に明記されていなければ書いていなかったと同じことにされてしまいます。

以前、電化製品を輸入する際に日本仕様のプラグに交換するよう、口頭で指示しました。しかし実際に届いてみるとそのままのものでした。日く「契約書にありませんでしたから」とのこと。皆さんはこんな目に遭わないようにしてください。

「品質」をどのように決めるか

前述したように、契約書を交わす際には、納品する商品の品質(Quality)をどのようにして決めるかという問題があります。

品質が変化したり、人によって見方が異なったりする場合、どの状態を取引の基準とするのか、当事者間で合意しておこうということです。この点を確認しておくことは、販売に関してだけではなく、後々クレームを発生させないためにも非常に重要です。

まず、品質取り決めの条件を見ていきましょう。

見本売買(Sale by Sample)

サンプル通りの品質で製品を納めるという、もっとも一般的な取り決めです。サンプル通りでなかった場合は契約違反になります。基本的に、この条件で契約書を交わすことをおすすめしています。

規格売買(Sale by Grade or Type)

国際標準化機構(ISO)や日本工業規格(JIS)などの規格をもとに品質を決める方法で、工業製品などに多く用いられます。

銘柄売買(Sale by Trademark or Brand)

商標や銘柄(ブランド)を品質の基準とするもので、世界的に知られている有名ブランドの取引などに可能な条件です。

標準品売買 (Sale by Standard)

農作物や水産物、木材など、見本と実際の商品との一致が難しいものの取引に適用されます。商品の「標準」を当事者双方で取り決め、それからずれていたら取引価格を調整します。

仕様書売買(Sale by Specification)

機械類などの取引に多く使われる条件で、図面などの仕様書をもとに品質を取り決める方法です。

品質をいつ決定するかが問題になる

品質条件を決めたら、次はその品質をいつの時点に設定するかを決めなければいけません。商品によっては、出荷時に十分な品質を保っていても、輸送中に劣化することがあります(*2)。
そういう場合は、責任の所在を明らかにしなくてはいけないからです。

品質決定の時期には、2種類あります。契約書で特に取り決めがなければ、貿易条件によって決定時期を決められます。


*2 同じような考え方に基づいたものに「数量条件」がある。積卸しをするたびに重量が変わる貨物(石灰など)は、数量を船積地・揚地のどちらに設定するか、あらかじめ決めておく。

船積品質条件(Shipped Quality Terms)

船積み時の品質が、契約書で取り決めた品質条件の通りであれば良いというもの。貿易条件がFOBやCIFの際に適用されます。

FOBやCIFは輸出者の責任が本船渡しの時点で終了するためです。

揚地品質条件(Landed Quality Terms)

輸入地で陸揚げされた時点での品質が、契約書で取り決めた品質条件と一致していれば良いというもの。

DATなど、輸出者が輸入地までの輸送費込みで責任を持つ場合に適用されます。契約時に貿易条件を決める際、品質の劣化などに不安があれば、たとえFOBやCIFでも揚地品質条件にするよう、交渉してみましょう。

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